天使のパトロール

 二人の天使は、横浜の個人事業事務所にてシフトワイヤーを交換し、近隣のパトロールに出た。

人通りの少ない路地、野犬や野良猫は悪さをしていないか。
不審な人物はいないか。

「あっ、プリンス・クリッパーだ」

子供達が元気に遊んでいる。仲間外れになっている子はいないだろうか。

危険なあそびをしていないだろうか。

工事現場では安全な作業が行われているだろうか。

「ここもクリッパーだ」

下校する中学生。通り雨に濡らされて体を壊さないように。

駅前は閑散としている。不審な気配は感じられない。

そこここにある空き地では子供達が野球をやっている。

グラウンドでも野球をやっている。

国道では危険な運転をする車両は無かった。ちょっと空気が悪い。

大学内に入ると、学生たちに囲まれてしまった。

商店街ではあちらこちらで威勢のいい声が飛び交っている。

どこからともなくいい匂いが漂ってきた。

「お腹減ったねえ」

「そろそろ帰ろうか」

「またね」

 作品の収納スペースが限界に達してしまったため、撮影台の下にあるガラクタを整理した。

ファームウェアが更新されずに使用できなくなったデジタル機器、取り外した古いオートバイの部品、
大型カメラやストロボなどのフィルム時代の撮影機材。使えないものばかりでゴミ袋6個分のゴミ。

そんな中、使える撮影機材があったり、2003年ごろに描いたと思われる背景画が数点出てきた。
そんな背景画を使って、天使たちにパトロールしてもらった。

2025.10.27

ベスパのある風景 飯塚隆行事務所