燃焼系トラブル「チューニング」直訳すると「調整」

 また、インシュレーターが切れた。ただ、今回切れた(破けた)のは、右側だった。と、いうことは、写真にある左インシュレーター・カバーによるヨジレのせいでは無い。今回なぜ、右側のインシュレーターが切れたのか。私の推測ではあるが、インシュレーターをシリンダーヘッドに組み込む際、ガスケットを使わなかったため、高温に熱せられたインシュレーターが、破けたのではないか。
 念のため、左右のインシュレーターを交換し、ガスケットを使って、組み込むが、この推測は、外れていた。

 なぜ、インシュレーターが切れたのか、また、なぜスローが不安定になったのか。

 スロー系の不安定は、二次空気の吸い込みによるものがほとんどだ。インシュレーターから、二次空気を吸っていないとなると、プラグ穴しか考えられない。確かに、右のプラグ穴の状態が怪しかった。

 今から10数年前、RZ250/350改を筑波サーキットに持ち込んだ。走行前に、スパークプラグの番手を変えようと、友人から、プラグレンチを借りた。今思えば、道具のせいにするのはナンセンスだが、かなり激しいプラグレンチで、プラグにソケットを差し込み、モンキーで閉め込むタイプだった。
 一周目の第二ヘアピンの立ち上がりから裏ストレートに差しかかったところで、後輪がロックし、クランクシャフト、シリンダーとも、お陀仏となった。
 この出来事が、プラグ穴恐怖症の始まりである。後にTZ250に乗るようになったときにも、チームのメカニックから「プラグは、思いっきり締めろ」と、言われていた。

 だが、節度がある。

 皆さんご承知のようにXS-1の振動は、かなりのものである。5,000rpm以上では、「地獄のバイブレーター」だ。(私の場合、そこに興奮してしまうが)
 XS-1を組んだ当初、振動でサイドカバーがはずれ、走行中に落としたことがある。その他、各締め付け部分が、緩む現象がある。
 何時しか、スパークプラグを、思いっきり締める習慣が付いてしまった。

 もはや、二次空気を吸う場所は、右のプラグ穴しか考えられず、プラグ穴からの二次空気によりインシュレーターが切れたとも考えられるため、プラグ穴の再生を決意する。

 ややこしい道具が必要なときは、松井工具だ。
 プラグタップを紹介してくれた。これを試してみる手もあったが、二次空気を吸っているとなると、プラグタップでは、済まないだろうと、リコイル(ヘリサートと同等)を購入した。

 リコイル自体、高度な技術が必要だが、プラグ穴となると、特に注意が必要だ。
 まず、通常のヘリサートタップと違い、先端にプラグタップがあり、更にその奥がリコイル用のタップになっているため、リコイルを挿入する部分のタップが完了する頃には、タップ先端が、ピストンヘッドに干渉する。(実際、ピストンを排気上死点で、作業を開始したため、ピストンヘッドに傷を付けてしまった)
 また、4サイクルの場合、バルブにタップが干渉しないように、しなければならない。
 もう一つの注意点として、切削粉がシリンダー内に入らないように、タップの溝に、たっぷりとグリスを塗る必要がある。4サイクルエンジンの構造を、理解している人なら、何ら難しい作業ではないが、そうでない人は、プロに任せるか、プラグ穴に、ライトを突っ込み、作業することをおすすめする。

 プラグ穴をリコイル加工することにより、XS-1の二次空気を吸い込む現象(老人性肺炎)は、完治した。後に、松井工具に行った際、「愛車が、二十歳の若者のように若返りました」と報告すると、松井さんの奥さん(自称うるさいおばさん)が「私もやって欲しい」と、言うので、「松井工具で、道具が売っていますよ」と、言葉を返した。

               が、

 今回の「チューニング」は、これで完結しない。
 二次空気を吸わなくなったものの、スローが安定しない。更には、5,000rpm以上、上昇しない。

            点火系統か?

 ポイントとガバナを点検するが、異常なし。ガバナが壊れているとなると、かなりの出費になるので、安心した。
 まずは、スローを安定させようと、パイロットスクリュー(エアスクリューとは違うので、要注意)を緩めてみる。3,000rpmあたりから、アイドリングにスムーズに回転が落ちるパイロットスクリュー回度を探す。スクリュー回度が、標準値よりも一回転以上開く値で、スローが安定した。(スムーズに回転が落ちるようになった)これは、むしろメイン系統の異常であると、ピンときた。

 わたしのXS-1の動力系統には、次の変更が加えられている。


キャブレター:XS650Eのもの。
コンロッド&ピストン周り:TX650IIIのもの。
シリンダーヘッド:?(ステムはTXだったかな)&ポート加工。
インシュレーター:TX650IIIのもの。
エアークリーナー:なし
エキパイ:ワンオフ
マフラー:ドゥカティーコンチ


 キャブレターのO/Hを終え、以前から問題を抱えていた高回転のセッティングを煮詰めようと、M/Jをいろいろと試していた。地獄のバイブレーターをスロットル全開で走行させる機会があまり無く、メイン系統のセッティングは、進まなかったが、これを機に、再開した。全開走行は、交通事情等、厳しい問題があるので、高回転側の伸びを主眼に置いて、作業を進める。


M/J150 5,000rpm以上、上昇しない。
M/J170 5,000rpm以上、上昇しない。
M/J190 5,000rpm以上、上昇しない。
M/J140 6,000rpm以上、上昇した。


M/J140で、パイロットスクリューを調整してみると、ほぼ、標準のスクリュー回度で、スロー系統も安定した。更に、M/Jを絞ってみる価値はありそうだが、現状で全開走行を行ってから判断したい。

 サーキットであれば、30分もあれば完了するのだが・・・。

 2003年11月5日

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