私は、1966年(昭和41年)生まれ。もちろん太平洋戦争も知らなければ、東京オリンピックすら知らない。大阪万博が、記憶にうっすらと残る程度だ。そんな私は、洗濯物を干しているときに灰田勝彦の「東京の屋根の下」や、鶴田浩二の「街のサンドイッチマン」を口ずさんでしまう。
 これは、妄想のタイムスリップで見る情景に強い影響を受けている。
 本作品「小春日和」は、そんな妄想タイムスリップ・ストーリーで大学生の私が(現実世界では、高校中退)高田馬場の下宿で、流しの窓から見える向かいの下宿の風景だ。フランス文学と学生運動の狭間で苦悩している私には、日に数度やってくる三毛猫に餌をやっている彼女の楽しそうな笑顔が眩しかった。

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