富士薬局 村岡夫妻

 なぜか私の両親は、よほどのことではない限り、こどもを医者に診せることをしなかった。こども達が体調を壊すと、まず薬局に向かわせるのであった。
 近所の富士薬局には、男前のお兄さんと、美人のお姉さんがいた。
 小学一二年生のころ、おまけにもらったウサギの人形は、母が編み物で作った胴体と組み合わせ、人形劇をやった。まさか人形作家になると、誰が想像しただろう。そして、富士薬局に私が作った人形を持って行くことになるとは、飯塚少年も考えていなかっただろう。
 赤チンや、絆創膏を買いに行っていた少年は、最近では、処方箋を持って富士薬局に行くようになった。私がオッサンになっても、富士薬局の夫婦は、未だに若々しい。