額の汗をぬぐいながら、長い坂道を登っていると、雑木林から蝉時雨。坂を登り切ると聞こえてくる川のせせらぎが、幼いころを思い出させる。お盆になると、都会からおませなあの子がやってくる。ぼくも大人になったら都会に出て、マイカーであの娘と海に行こう.........。
 といった想いをしてみたかったが、里を持たない街の子であった私は、夏休みが来るたび、「田舎に帰る」という言葉に嫉妬心を込め、家の前を流れるどぶ川に浮かんだコーラの空き缶に小石を投げるのであった。


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