50s改 ET3 1XXs

 立体イラスト作品「ベスパのある生活」というのを作ろうと考えていた。そこに登場するベスパは、Smallの125cc。色はパールホワイト。スペアタイヤはつけずに、グローブボックスを取り付ける。ただの妄想であるはずだったが、ヤフオクでVespa 50sの手頃なものを探す習慣が付いてしまった。横浜市内で15万円くらいなら...

 そう簡単に見つかるものではなかった。突然、オークション開催期間が短い物件を見つける。格安で落札し、その後約二ヶ月にわたってVespaのことしか考えられない日々が続いた。

 まずは50sを入手したことをボスに報告。プランを聞いてもらう。

宇賀神商会に必要なものを注文する。

 部屋中部品の山になる。

 山梨県南アルプス市からやってきた新しいお友達は、車台番号から1979年に生産されたモデルであることがわかる。いわゆる再生産前モデルである。「再生産前モデル」とは、よく見かける文字列だが、具体的なことは、分解しながら学んでいくことになる。

 即日分解。エンジンのパーツが揃ったので、クランクを合わせてみる。

 やっちまったのである。

 24mmコーンのクランクを注文。これは再生産後のET3等には使用可能なのだが、50sに装着するには、ベアリングとオイルシールをかなり特殊なサイズを使わなければならず、20mmコーン、51mmストロークのクランクを再注文することになった。

 とりあえず、裸になったフレームの剥離、サビ落とし作業。今回は屋外で行った。

 あたりまえだ。

 フロア下サイドスタンドが当たる部分2箇所にひび割れを発見。ボディー左にも一箇所。

 溶接となると、ボスに縋るしかない。

 ボングーに持ち込み、ボスにクラック修理及びスポット増しを行ってもらう。「溶接跡が汚いからお金とれないや」と。タンカレー・ロンドンドライジン2本がボスの報酬となった。

 レッグシールド裏側にPXのようなグローブボックスを取り付けるのだが、穴を開けてステアリングコラム側からボルトを指す方法を考えていたところ、ボングー常連客の坂本さんにナットサートなるものを教えてもらい、施工。おお、素晴らしい。

 この工法を宇賀神商会にも報告。

 んで塗る。屋外で。

 サフェーサー、白、パール、クリアーと拭いていくのだが、白を吹く際、シンナーを間違えてしまい、かなりの塗料を無駄にしてしまった。

 そんなことをレース前日にやる作業では無いことは十分わかっていたが、ベースの白まで塗り終える。

 ボスにスポット増しをしてもらい強化したフロアーを2mmのアルミ板でさらに強化する。

 ワイヤー類を通してからステアリングコラムを組むアンダーレースの打ち込みが浅く、ドラム缶のキャップを使ってやり直した。このキャップのサイズが絶妙だった。

 最も苦手な作業も根気強くやっていく。毎回、気絶しそうになる。

 Vespa専門店ならこういった作業も手際よくやっているんだろうなあとその技術力に敬意を表するのであった。

 エンジンの部品も揃ったので一気にエンジンを組む。

 ここでひとつ「再生産前モデル」ではドライブシャフトの径が違うことを知る。そこで以前、クランクケースを割ってしまい、ボスに用意してもらったエンジンのドライブシャフトを用意し、前後ハブもET3仕様にする。

 ベアリング、駆動部品。マイクロロンを刷り込んで60°Cに加熱。

 一気にエンジンを組み上げる。、ミッションもET3仕様。

 排気ポート、転送ポートをちょっとだけ広げる。このくらいがちょうどよかった。

 そしてシリンダーを組み、エンジン完成となるが、ここで、また、

 やっちまったのである。

 スタッドボルトをさし、シリンダーヘッドを締め付ける際、仮締して、完全に閉めているものと思い込んでいた。

 後にエンジンをかけようとしてもかかりそうでかからない。

 シリンダーヘッドを増し締めすると、スタッドボルトが根本からヌルッとした。

 リコイル加工することに。

 今回はCDIにSIPの物を使用。基本的にVespa GP 62号車と配線は同じだが、ストップランプスイッチの配線を簡素化している。

 PXも62号車も、タコメーターのパルス波をプラグコードから拾っているが、このマシンのプラグコードは完全にノイズをシャットアウトするプラグコードを使用しているので、コイルの配線につなぎ、シリコンパイプを被せ、フェライト磁石を通している。

 この対策を行わないと、6600rpm以上で誤作動していた。

 登録が結構面倒だった。50ccの車両を125ccに変更するため改造申請をしないといけなくなっていた。
 使用した部品の納品書と、部品の構造がわかる書類。今回は、排気量の変更なので、ボア、ストロークがわかる商品説明書等。
 陸運事務局の職員のように、自動車の専門家を相手にするわけでは無いので、鋭いツッコミはないが、書類は必要のようだ。(地域により)

 この車両は、車高を上げないつもりだったが、50sに比べてシリンダーが大きく、シリンダーヘッドとボディーのクリアランスがかなり狭いため、リアショックにディスタントナットを使用。結果、62号車同様、いろんなところが干渉するので、リアショック上部のマウントを後方に移動し、インテークマニフォールドが通る穴を拡張しないといけなくなった。
 キャブレターはDellorto VHST24BSを使用。フラットバルブタイプでPHBLに比べて柄がデカイ。パワーフィルターはこのように短い物を選ばないとスペース的に装着できない。

 と、いったわけで、ベスパ道 序章はここまで。更に道が開けたらこの場で皆さんに報告するとしよう。

 タコスも食べたし、Vespaで近所を走ろうかな。

2023.7.22 Taka Iizuka

走行動画(Youtube)

ベスパ道 飯塚隆行事務所