「どうぞ」といって坂本に差し出し、笑みを浮かべていた。 さては、ここは本屋ではなかったか。そう感じながら、坂本は、デミタスカップに浮かん だコーヒーのクレマ(エスプレッソコーヒーの上澄みに出来る泡)をすすろうとしたところ で目が覚めた。 夢であった。 陳列された本、美人の店員。夢から覚めて何度もいろんなことを検証してみるが、細かい ところまで思い出せず、ガッカリする。 何よりも、エスプレッソのクレマがすすれなかったのが悔しく、後で駅前の喫茶店にエス プレッソを飲みに行こうと決意するのであった。 何かのお告げか、それとも戒めか。坂本は、なかなか居心地の良かった世界から抜け出し たくないと思いながらも目を覚ました。 目を開け、自分の頭のすぐ横に置いてあるはずの目覚まし時計が無いのに気がつく。 おや、と思いながら、左に寝返りを打つと、ガラス窓が見えた。更に、ベッドではなく、 |
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