「やあ、おはよう。」 「おはようございます」 野村が、恥ずかしそうに下を向いている新入社員を、謙二郎と島野に紹介する。 「まあ、以前から話はしていたが、亮子が生意気にも嫁に行くもんで、今日から事務をやっ てもらう緒方登美子君だ。高校を卒業したばかりで、わからないことも色々あってとまどう かもしれないが、よろしく頼む。そうそう、そろばんが得意なんでだそうで、後々燃焼室の 容積や、点火タイミングの計算をやってもらうのも良いかもしれんな。さあ、緒方君、自己 紹介しなさい。」 野村は、緒方登美子の肩をポンとたたき、自己紹介させた。 「今日からお世話になります。緒方登美子です。・・・・よろしくお願いいたします。」 登美子は、顔を上げられないまま簡単な自己紹介をした。 「死んだはずだよお富さん?」島野が茶化すように歌い、みなが一斉にゲラゲラと笑い出し た。 野村は、亮子にお茶を入れるよう、手振りで指示し、亮子は登美子を伴って、給仕場の方 へお茶の支度に向かった。そんな二人の後ろ姿を見ながら、 「お富さんじゃあんまりだから、トミちゃんくらいにしてやれよ」そう野村が言うと、その 時から緒方登美子は、トミちゃんと呼ばれるようになった。 |
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