四号電話機は、坂本の実家でも以前使われており、その形はうっすらと記憶があったが、 三号電話機という電話機の形が思い浮かばない。インターネットを駆使すれば、電話機の映 像くらいはすぐに見つかるのだが、坂本はパソコン自体持っておらず、手持ちの書籍で見つ からないものは、図書館で調べることになる。 坂本は、鞄にスケッチブックと資料を詰め込み、秋空の中、図書館に向かった。 図書館で電話機関連の資料を見つけると電話機などのスケッチを終え、図書館を後に陽が 傾き始めた繁華街の路地裏を駅に向かって歩き出した。 「ファッションヘルス」など、意味不明の和製英語や「90分¥15,000」など、 「風俗店」と名乗る売春産業の派手な看板が立ち並ぶ通りを、学校帰りのこども達が路地を 横切ってゆく。坂本の背後からは、黒光りした大きな車が、この細い路地を無謀なスピード で通り過ぎていった。 そんな光景にわびしさを感じ、しばらく歩いていると、派手派手しい看板は少なくなり、 ぼちぼち店を開けようとする赤ちょうちんが目に付きだした。 どこからともなく漂ってくる焼き鳥の匂いに誘われたのか、道ばたで眠っていた野良猫た ちが、あちこちから集まってくる。まだ夕食には早いが、焼き鳥で一杯やりたい気分になっ |
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