畳の上に布団が敷いてあることがわかる。 そこが自分の住むアパートの一室ではないと察した。 ここはどこなんだ。何となく見覚えがあるような無いような。 なぜ自分がここにいるのか、部屋の中を見回しながら考えてみるが、なかなか答えが出て こない。坂本は、布団から出ると立ち上がり、窓から外を覗く。正面に木造二階の建物が見 えた。ちょうど正面には二階の部屋の窓があることから、今、自分がいる部屋も二階である ことがわかった。 窓枠と窓枠をおさえているねじ込み式の鍵を回し、ゆっくりと窓を開けてみる。窓際に腰 を下ろし、外を見ると、むかいの奥さんが竹箒で玄関先を掃きながら通りかかった近所の人 と挨拶していた。 坂本は窓から入ってくる朝の風にあたりながら、布団の上にああぐらをかき、自分が昨日 何をしていたのかを思い出そうとしていた。 「ケンちゃん、遅れますよ」 下の方から襖越しに聞こえた声は、自分にむけられたものと感じた。 「ああ」坂本は、反射的に、答えた。 状況が理解できないまま、畳の上に敷かれた布団をたたみ、押し入れに仕舞う。 |
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