射陽 - 第二章 悲しいキャッチボール -
 前田が振り返り、
「調子悪そうだね」にやっと笑う。
「なんだか調子悪いなあと思っていたんですけれど、さっき近くの弁当屋の前でキックを踏
んでいたら、パーン!って音がして、キャブレターが抜けたんですよ。そしたら弁当屋から
かわい子ちゃんが出てきて、ここに行けというんで、持ってきました」
「そのかわい子ちゃんなら、よく知っているよ・・見てみるから中へ入れてくれ」

 杉野が、オートバイを店の中に入れる。
「二次空気を吸っているんですかねえ」
「それもあり得るけど、タイミングを見てみようか」
「こないだ、合わせたんですけどねえ・・」
「この手は、すぐに狂うんだよ」
「はあ・・・・・」

 前田は、ポイントカバー、ダイナモカバーを外し、点検する。
「ギャップが少し広いねえ」
「はあ・・・・」
目次.
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