射陽 - 第二章 悲しいキャッチボール -
数秒で発見するだろう。そう思った。

 それまでに、店の準備をすませてしまおう。由希子は、仕込み掃除など、手早く終えた。
 
 由希子が、茶の間に戻りお茶を飲んで休憩しているところへ、玄関がガラガラと空き、
「ただいまー」征雄が学校から帰ってきた。
「おかえり」
 征雄は、ランドセルを背負ったまま、いつものように無造作に冷蔵庫をの扉を開け、ペッ
トボトルを手に取ろうとしたところで、赤い小さなグローブが目に入った。
「おー!」征雄の声が茶の間まで聞こえてきた。
「どうしたの」白々しく、由希子が問いかける。
「ロペスだ。うおー」
 グローブの入ったビニール袋を、小さな手で開けながら、征雄が茶の間に入ってくる。
「かあちゃん、ロペス、ロペス、グローブ、ボ、ボ・・」
「ボールでしょ」
「ボール」

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