射陽 - 第二章 悲しいキャッチボール -
「栄さんは出かけているの?」
お茶の支度をして由希子がお膳の前に座る。
「ええ。中古の電子レンジを見に行ってるの」
「お店で使うんでしょ、中古で大丈夫なの?」
「大丈夫でしょ。元電気屋さんなんだから」
「そう・・・。きのうね、お父さんにマー坊が歩けるようになったのよって、教えてあげた
らジュラルミンで手押し車を作るって言い出したんだけど、転んで怪我したら危ないって、
思って、止めたみたい。何か作ってあげたくて仕方ないみたいね」

 謙二郎と杉野をお茶菓子に、午後のティータイムは、いつものように楽しいはずであった。

「プルルルルン」茶の間の電話が鳴る。
「あの人よ。どれにしようか悩んでいるのかしら」
 その電話は警察からだった。

 リサイクルショップの前で、電子レンジを車に積み込んでいるところへ、前車を左側から
追い越そうとし、ハンドル操作を誤ったダンプカーが直撃し、杉野は、その場で三十三年の
目次.
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