射陽 - 第二章 悲しいキャッチボール -
「ひょっとして、二人目?」
「えっ、まさか、一人目がまだハイハイも出来ないのに。いや、良い物件を見つけたんだ」
そう答え、我慢に我慢を重ねたタバコを深く吸い込み、ゆっくりと煙を吐き出す。
 ピース独特の匂いが周囲に広がり、
「なんだ、ピースなんか吸ってるの。一本ちょうだい」
 杉野は、マスターにタバコを一本差し出し、火を点けてやる。マスターも深く吸い込み、
ゆっくりと煙を吐き出す。フーちゃんは煙たそうに一歩、後ずさりした。
 マスターはタバコを灰皿に置き、
「ピースはうまいけど、キツイねー。んで、物件って、居酒屋のことだろ、どこにしたの」
 二人の男は、吸いなれないショートピースにクラッとして目を細める。
「いや、見つけたってだけですけどね。すぐそこのそば屋に売家の札がかかっていたんで、
とりあえず連絡先だけ控えてきました。ほら」
杉野は、ピースの中箱に書いたメモをマスターに見せた。
「へえ。あそこは、ここんところ休んでいたみたいだけど、売りに出したか。おじいさんと
おばあさんでやっていたみたいだけどねえ。どうしたんだか・・」 
 そう言うと、マスターは灰皿に置いたタバコを口に運び、入り口の窓から外の通りを見つ
め、タバコを吹かした。杉野の体には、ショートピースのニコチンが体中にしみ込み、ふら
目次.
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