射陽 - 第二章 悲しいキャッチボール -
妹、由希子の母や妹。入れ替わりで店に来て、征雄の子守りや、家事を手伝って貰いながら
少しずつ、なじみ客もできるようになり、居酒屋の大将と女将は、まだまだ、さまになって
はいないが、それっぽくなってきた。
 
 三月。店の貸し切り予約が数件入った。どれも送別会らしく、うち三件は杉野の同僚であ
り、杉野は、何とか励ましてやろうと意気込んだ。
 予想以上に忙しくなったものの、アルバイトを雇えるほど売り上げが伸びておらず、二人
で話し合った結果、大きめの電子レンジを用意すれば、効率が上がることに気が付く。
 杉野は、車で国道沿いのリサイクルショップに電子レンジを見に出かけた。

 家では、家事をしている由希子を追いかけ、征雄が立ち上がっては数歩歩き、尻餅をつく
という動作を続けた末、征雄が疲れ果て座り込んでいた。

「こんにちは」玄関から由希子の母、登美子が入ってくる。
 征雄はお膳に捕って立ち上がり、両手を突き出して登美子の方へ五歩歩き尻餅をついた。
「まあ、上手になったわねえ」
 祖母に抱き上げられて、誉められた征雄は満足そうに笑った。
目次.
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