射陽 - 第二章 悲しいキャッチボール -
 修理代を精算し、オートバイを店の外に出す。暖機運転をしている間に前田が言った。
「こいつはバッテリー点火だから、バッテリーが上がるとエンジンがかからなくなるからね。
充電系統もきちんとしておいた方が良いよ。自分で点検してみて、調子よくならなかったら
また来なよ」
 オートバイは、調子を取り戻し、杉野は無事に独身寮に帰った。

 翌月曜日、杉野はいつものように弁当を買いに行き、オートバイが快調になったことを由
希子に伝えた。完全に直ったと思われた杉野のオートバイであったが、次の日曜日、近所の
買い物から帰る途中、ヘッドライトカバー上にあるパイロットランプの光が弱くなってきた
と杉野は気になっていたが、走行中、エンジン停止。バッテリーが上がってしまい、何度も
キックを踏んでみたが、エンジンが始動することはなかった。遂、一週間前に前田から警告
されたことが現実に起こってしまった。
 仕方なく、二百キロ近いオートバイを二キロ近くの距離、国道を押して歩き前田モーター
に向かうのであった。

 前田モーターでは、店先で納車するオートバイを、前田謙二郎が鼻歌を歌いながら磨いて
いた。
目次.
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