射陽 - 第二章 悲しいキャッチボール -

 キャッチボールの後、部屋にこもってしまった征雄だが、店の営業を開始すると、いつも
のようにカウンターの一番隅に座り、何度も読み返した「走れ!ロペス」を読むのであった。

 昭和二十年代、少年は、兄たちが原っぱでやっている野球を眺めていた。まだ小さかった
少年は仲間に入れてもらえず、ただ、眺めていた。

 ある年の誕生日、目が覚めると、枕元にグローブが置いてあり、少年は野球を始めた。
 翌年の誕生日、枕元にはバットが置いてあったという。

 月日が流れ、少年は日本プロ野球界で唯一、ミスター・赤ヘルと呼ばれる男になる。

 こんな逸話が、何かの記事になっていたが、果たして、ある日、冷蔵庫でよく冷えたグロー
ブを見つけ、居酒屋の女将をしていた母親とキャッチボールをはじめた少年は、どんな夢に
向かってゆくことだろう。

2006年9月1日 〜第三章へつづく・・・・

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