射陽 - 第二章 悲しいキャッチボール -
「東京のー、屋根の下に住むー、若い僕らーは・・・・おっ、どうした。バッテリーか」
 オートバイを押してきた杉野に気が付いた。
 杉野は店の前にオートバイを駐め、
「バッテリーは新しいから安心していたんですけど、充電していなかったんですかね」
「レギュレターだな。とりあえず、バッテリーを充電しておこうか」
そう言うと、車体からバッテリーを外し充電器にセットした。

「バッテリーを充電しないと手が出せないから、お茶でも飲もうか」
「はい・・」
 前田は、店の奥から、居間の方に向かって大声で言った。
「ユッコー。ユッコちゃーん。前田由希子さーん。コーシー二つ入れてくれ」
「・・・・」
「ん、うちの箱入り娘はどこに隠れてんだ・・」
 前田がウロウロしているところへ、しばらくして由希子が顔を出し、杉野を見つける。
「あら、杉野さん。オートバイ直ったんじゃなかったの」
杉野は、照れくさそうに笑いながら、
「直ったんだけど、別のところが壊れたみたいで・・・・」
目次.
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