二人は、家中を見た後、不動産屋の事務所で金額を提示されたが、支払い方も含め、もう少し 検討させて貰うとして事務所を出た。 由希子が、杉野の腕を抱えて、 「もう決めたんでしょ」 「ああ、何とかなる数字だね。先方がシビレを切らして連絡してくるまで、金融機関だの役 所だの、色々忙しくなるぞ」 「そういうのは、あんたに任せたわ」 二人は腕を組んだまま、商店街の入り口に差し掛かるところで、杉野が足を止めた。 「お嬢さん。お茶でもしませんか」 「えー。どうしようかなあー。変なことしない?」 「する。・・よくコーシーを飲みに行ってる店が近くにあるんだ」 「いやねえ。うちのお父さんみたい・・」 三ヶ月後、居酒屋「ゆき」が開店した。 二人が思っていた以上に忙しく、二人が思っていた以上に儲からなかったが、杉野の母や |
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