射陽 - 第二章 悲しいキャッチボール -
 二人は、家中を見た後、不動産屋の事務所で金額を提示されたが、支払い方も含め、もう少し
検討させて貰うとして事務所を出た。
 由希子が、杉野の腕を抱えて、
「もう決めたんでしょ」
「ああ、何とかなる数字だね。先方がシビレを切らして連絡してくるまで、金融機関だの役
所だの、色々忙しくなるぞ」
「そういうのは、あんたに任せたわ」

 二人は腕を組んだまま、商店街の入り口に差し掛かるところで、杉野が足を止めた。
「お嬢さん。お茶でもしませんか」
「えー。どうしようかなあー。変なことしない?」
「する。・・よくコーシーを飲みに行ってる店が近くにあるんだ」
「いやねえ。うちのお父さんみたい・・」

 三ヶ月後、居酒屋「ゆき」が開店した。

 二人が思っていた以上に忙しく、二人が思っていた以上に儲からなかったが、杉野の母や
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