射陽 - 第二章 悲しいキャッチボール -
生涯を終えた。そして、命と引き替えに、各保険金で、店と家族を守った。

 征雄の部屋の窓から外をぼんやりと見つめていた由希子が呟いた。
「あんた。マー坊が、キャッチボールしたいみたいよ」
 
 近所に買い物へ出かけた由希子は、ゴムボールなら自分でもキャッチボールの相手をして
やれるのではないかと、スーパーのおもちゃ売り場を覗いてみた。
 プロ野球チームのロゴや、人気ゲームのキャラクターイラストが入ったビニールのグロー
ブ、バット、ボールのセット。バットを振ると、音が出るおもちゃ。いろんなものが目に入っ
てくるが、ボール単体は無いか、売り場を隅々探してみる。

 無造作に商品が置かれたワゴンの中に、あのロペスの顔が見えたような気がした。

 由希子は、おもちゃをかき分け、ロペスの顔を探していると、ロペスの顔のイラストが描
いてあり、小さな二つのグローブと、ボールが五つ入った商品を見つける。

 由希子は、これを買って帰り、台所の冷蔵庫に隠しておく。征雄が「ただいま」と言って、
目次.
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