射陽 - 第三章 正義のカミソリシュート -
 西本は八キログラムに満たない自転車を肩に担ぎ、鉄階段を「カチッ、カチッ」と音を立
てながら二階にある坂本の部屋まで登った。
「コンコン」ドアをノックし
「おう、西本だ。本を持ってきたぞ」
西本がドア越しに声をかけると、まもなくドアが開き坂本が顔を覗かせた。
「おう、寒い中悪いねえ。それにしても、好きだねえ全く」
 ドアの隙間から、これでもかというくらいにコーヒーの香りが吹き出して来る。
 自転車を担いだまま、西本は中に入り、
「相変わらずこの家はコーヒー臭いな」
「まあな。ここんところ胃の調子が悪いんでエスプレッソにしているから、余計に臭うのか
もしれないな」
 西本は、自転車を下駄箱にも垂れかけさせドアを閉めた。
「ここに自転車を置かせてもらうよ」
「ああ。高級車を外に出しとくわけにもいかないもんな」

 二人は、仕事部屋に入り、それぞれ椅子に腰掛け、西本が出版元から預かった本が数冊入
った袋を坂本に手渡す。
目次.
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.55.56.57.58.59.60.61.62.63.64.65.66.67.68.69.70.71.72.73.74.75.
.76.77.78.79.80.81.82.83.84.85.86.87.88.89.90.91.92.93.94.95.

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