望が診察室に入っていく。扉の向こうで看護師が大声を出した。
「手術しなきゃいけないって言ったでしょ。こんなに無理しちゃって」 そして、苦しそうな望の声がした。 「お願いです。薬をください。薬があれば、まだ戦えるんです」 坂本は、診察室の扉に向かって、マシンガンを持ったまま立ちつくした。 やりきれなかった。 ドーンと救急の入り口が開き、大急ぎで担架が運ばれてくる。右足を失ったカメラマンの 西本であった。 「西本さん」 「あっ、坂本さん。地雷にやられた」 「・・・・」 西本は担架の上で、右手に持ったカメラを坂本に突き出し 「俺は、こいつと引き替えに、正義というものがわからなくなってしまった」 |
目次. 第二章へ .55.56.57.58.59.60.61.62.63.64.65.66.67.68.69.70.71.72.73.74.75. .76.77.78.79.80.81.82.83.84.85.86.87.88.89.90.91.92.93.94.95. |
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