少年は布団を腰のあたりまで下げ、上体を起こして、となりで同じ体勢をしている坂本と
目が合い、目をこすりながら言った。 「父さん、おはよう」 「ああ、おはよう」 坂本は、無意識に返事をしてしまったが、父さんと呼ばれて戸惑った。 『いま、父さんと言われたようだったが』 『あの少年は、居酒屋のマー坊に似ているが、彼の方が一つ二つお兄さんのような』 『まさか、マー坊のお兄さんか。するとここは、居酒屋の女将の家か』 少年と顔を合わせたまま、坂本はしばらくいろいろなことを考えてみたが、状況が理解で きず呆然としていた。 少年は、布団から出て立ち上がり、 「まいにち〜まいにち〜、ボクらはてっぱんの〜」歌いながら部屋を出て行った。 およげたいやきくんか、あの子は、何であんな歌を知っているんだ。 部屋に取り残された坂本は、およげたいやきくんの続きを口ずさみながら布団をたたみ、 押し入れに放り込む。 |
目次. 第二章へ .55.56.57.58.59.60.61.62.63.64.65.66.67.68.69.70.71.72.73.74.75. .76.77.78.79.80.81.82.83.84.85.86.87.88.89.90.91.92.93.94.95. |
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