射陽 - 第三章 正義のカミソリシュート -

 そんな仕事をしている様子から、坂本は彼女に『小さなマシンガン』というあだ名を付け
てよんでいたのだ。

 全く人気のない道に、ぽつんと一人、望は立っていた。

 車を運転しているのが坂本だと気が付き、望は手を振った。なぜか、小さな体にマシンガ
ンを背負って。
 坂本は望の前で車を止める。
「乗せてね」
一人乗りだったはずの車の助手席部分に楕円形の穴が開き、望はそこに乗り込んだ。
 坂本は、彼女がとなりで抱えているマシンガンが少し気になったが、そのことに触れては
いけないような気がして、真正面を向いて運転に集中しているふりをした。
 何気なくバックミラーに目をやると、助手席でうつむいている望の頬に擦り傷を見つける。
 坂本は思った。
おそらく、このあたりで起こっている紛争に巻き込まれたのだろう。
 人はなぜ殺し合うのか。
坂本は切なくなり、泣いた。涙は頬に落ちず、風圧で後方に流されていった。
目次.
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.55.56.57.58.59.60.61.62.63.64.65.66.67.68.69.70.71.72.73.74.75.
.76.77.78.79.80.81.82.83.84.85.86.87.88.89.90.91.92.93.94.95.

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