射陽 - 第三章 正義のカミソリシュート -
「ん、ああ、もうそんな時間か。あいよ」豊は、のそのそと足場を降りていく。

 裏の縁台では、大工を差し置いてケン坊と栄が一足早くお茶をすすりながら、せんべいを
かじっていた。
 豊は腰袋を縁台の上に置き、
「んじゃあ、イップツさせてもらおうか。ん、ウチの職人が二人増えたか」
そう言って、せんべいで脹らんだケン坊の方を人差し指で優しくつついた。
 そこに家主の奥さんが、ビスケットをお盆の上に乗せて顔を出す。
「杉野さん、イップツは賑やかな方が良いでしょ」
「いやあ、豪華なイップツで恐れ入ります」
ビスケットを頬張った栄が、もぐもぐしながら切り出す。
「父さん、なんか材料あった」
 豊は、裏庭の隅に畳んで束ねた建具を梱包してあった段ボールの方に視線を送り、
「おお、そうだ。大きな段ボールがあるから、あれがいいや」
「おお、大きいね」
「ところで、どうやって子ぎつねを作るんだい」
父に問われて栄は、足元に置いた手提げ鞄の中からボール紙で出来た子ぎつねゴンのミニチュ
目次.
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.55.56.57.58.59.60.61.62.63.64.65.66.67.68.69.70.71.72.73.74.75.
.76.77.78.79.80.81.82.83.84.85.86.87.88.89.90.91.92.93.94.95.

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