射陽 - 第三章 正義のカミソリシュート -
 薄暗い部屋のカーテンを開け、ねじ込み式の鍵がかかった木枠の窓を開けると、窓から朝
の空気が入ってくる。
 坂本は窓辺に腰掛け、外に目をやる。『いったいここはどこなんだ』最初に目に入ったの
は向かいの家のさびたトタン屋根であった。その上の窓の軒先に円形の物干しがつるされ、
作業着が微風に揺らされている。
 建物の角あたりに立つ木製の電柱が目に入り、視線を下げていくと未舗装の荒れた路地が
見えた。
 2サイクルの軽自動車が、路地を揺られながら走り去ってゆくのを上から見下ろし、
『また、妙な夢の世界に入ってしまったのか・・ほんの数秒前に目覚めたばかりだと思って
いたんだが・・・お父さんと呼ばれていた。・・家族がいるのか。夢の世界でも何でもいい。
この際、楽しもう』どこかで見たような、なにか懐かしい気さえする外の風景を見ていた。

 無意識に、たばこ盆に手をやり、チェリーを一本取り出してマッチで火を付ける。
『ん、たばこはしばらく前にやめていたはずだったが・・』

 部屋の外から、階段を上ってくるかわいらしい足音が聞こえた。
足音の主は、ふすまを開け「父さん、ごはんだよ」
目次.
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.55.56.57.58.59.60.61.62.63.64.65.66.67.68.69.70.71.72.73.74.75.
.76.77.78.79.80.81.82.83.84.85.86.87.88.89.90.91.92.93.94.95.

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