アを取り出して父に見せた。
豊はそれを手に取り、観察する。 紙相撲の力士のように背中で二つ折りにした胴体に、鼻筋で二つ折りにした頭部、その下 には顎が取り付けられた、手のひらにのるくらいの大きさで、とても愛らしい子ぎつねであっ た。豊は、一目見て息子が作ったものでないことがわかった。 「ほう。かわいいねえ。誰に作ってもらったんだい」 父は、手のひらに乗せた子ぎつねのミニチュアを栄に差し出す。 「昼休みに浩二先生が作ってくれた」 浩二先生とは、栄の担任教師で、自ら独自の教材を作り、父兄の間でも評判の先生でる。 「そうか。浩二先生は何を作らせても上手いなあ」 「うん。浩二先生は野球も上手いんだよ」 当然である。 子ぎつねゴンの材料、段ボールは栄の背丈よりも大きなもので、豊に運んでやろうと言わ れたが、すぐにでもゴンを作りたかった栄は、ケン坊に手を借りてその場から持ち帰っていっ た。 |
目次. 第二章へ .55.56.57.58.59.60.61.62.63.64.65.66.67.68.69.70.71.72.73.74.75. .76.77.78.79.80.81.82.83.84.85.86.87.88.89.90.91.92.93.94.95. |
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