射陽 - 第三章 正義のカミソリシュート -
 三時の一服を終えた豊は、翌日の作業に備え手早く材料を準備し、日が暮れる前に現場を
後にする。 

 帰りの車を運転する豊の頭に、様々な場面が浮かんでくる。
 もし、栄が作ったゴンを、真知子は気に入らず栄が悄げていたら、
はたまた、栄がゴンを思ったように作れず、悩んでいたら、
バラバラにされた、段ボールで出来たゴンを想像してしまうのである。
 そう思うと、なんだか家に帰るのが怖くなり、寄り道して時間を稼ごうとも考えてしまうが、
父として、子供たちを信じ、事態を見届けようと決意した。

 車を車庫に入れ、作業場で一通りの片付けを終えて、豊は玄関前から聞こえる子供たちの
声に耳を傾ける。
 はっきりと聞き取れなかったが、栄と真知子の楽しそうなやりとりが伝わってくる。

 ゴンは、生きていた。
 茶の間で、自分の背丈と変わらぬゴンと一緒に真知子がキャアキャアやっている。
 父は安心し、台所で夕飯の支度をしている妻に尋ねた。
目次.
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.55.56.57.58.59.60.61.62.63.64.65.66.67.68.69.70.71.72.73.74.75.
.76.77.78.79.80.81.82.83.84.85.86.87.88.89.90.91.92.93.94.95.

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