「ん、これ」 「お、わりい」 坂本が袋から児童書「電話機のクロちゃん」を取り出し、目を通す。その間、西本が部屋 を見渡していると、真新しいエスプレッソマシーンが目に入り、立ち上がって近くで見てみ る。 「おう。こいつもイタリア製かあ」 挿絵の確認をしていた坂本が、本を閉じ 「ああ。あんたの自転車と同じだ。何十万もしないけど・・あ、催促だった?」 「もったいぶらずに飲ませろよ。エスプレッソとやら」 ニヤニヤしながら豆を挽きだした坂本の顔を覗きながら西本が、 「顔色も良さそうだし、胃の調子も良くなったみたいだな」 ガリガリ、ガリガリ、豆を挽き終えた坂本が、 「ああ、ここんところ嫌な痛みから解放されているよ。そりゃあ良かったんだけど、石油ス トーブのせいか、頭痛がおきるんだよな」 「まあ、商売柄、仕方がないけれど、たまには外へ出て、体を動かした方がいいぞ。坂本さ んも自転車はじめるかい?」 そう言われ、坂本は、西本の太ももに目をやり |
目次. 第二章へ .55.56.57.58.59.60.61.62.63.64.65.66.67.68.69.70.71.72.73.74.75. .76.77.78.79.80.81.82.83.84.85.86.87.88.89.90.91.92.93.94.95. |
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