目の前の徳利がグラグラと揺れた。坂本は、一瞬、自分が何処にいるのかわからず、目の
前に並べられた徳利をしばらく眺めた。 居酒屋ゆきにいることがわかり、随分と長い間眠ってしまったような気がして、店の中の 時計を探す。思ったほど時間が経過しておらず、一安心した坂本に女将の由希子が 「何か作りましょうか?」 「んっ、んん・・・・私、眠ってた?」 「あら、難しいことでも考えてると思ってたわ」 「・・・いや、ウトウトして・・」 「お忙しくて、疲れてたんでしょう」 夢の中の心地よさから抜け出せず、坂本はぼけっとしながら夢で見た場面を思い出して見 るが、恐ろしい場面もあったような、懐かしい風景を見たような。断片的に思い出すだけで、 どんな夢だったのか、思い出そうとすればするほど夢の残像が薄れてゆく。 坂本は、千円に満たない勘定を済ませ、釣り銭を返す由希子が 「私が相手じゃ退屈になって、眠くなっちゃったんでしょ」 坂本は、ニヤッと笑い |
目次. 第二章へ .55.56.57.58.59.60.61.62.63.64.65.66.67.68.69.70.71.72.73.74.75. .76.77.78.79.80.81.82.83.84.85.86.87.88.89.90.91.92.93.94.95. |
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