『どこまで来てしまったのか』 やがて信号は青に変わり、坂本は車を発進させ坂道の頂上を通過する。 道の先に海が見えた。 海は日が落ち真っ黒く見えた。黒い海は荒れているようで波が白い筋となって海岸に向か って走っている。 車が下り坂に差し掛かったところで、道路の左側にぽつんと一軒建った木造の建物が目に 入った。 車が建物に近づくと、建物のシャッター扉の前に老人の姿を見つける。 老人は、通り過ぎようとしている坂本に手招きをし、もう一方の手で半開きのシャッター 扉を指さしている。 坂本は、老人を無視することなく、スピードを緩めて会釈でもして通り過ぎようとしたが、 車の前方で『パーン』と大きな音がし、坂本の車は老人の前で止まってしまった。 老人は、器用に助手席側の窓ガラスを車外から下ろし、顔をつっこんで 「おう、ちょっと来いや」そう言ってシャッター扉の中を指さした。 |
目次. 第二章へ .55.56.57.58.59.60.61.62.63.64.65.66.67.68.69.70.71.72.73.74.75. .76.77.78.79.80.81.82.83.84.85.86.87.88.89.90.91.92.93.94.95. |
-68-
トップページへ