坂本はカメラを受け取り、再びあの老人を思い浮かべた。とにかく、マシンガンとカメラ、
そして車をあのガレージにもどり、老人に返そうと、病院を出て車を乗り捨てた辺りまで戻っ てみたが、車が見あたらない。 地面に、白いチョークで『悪魔の車レッカー移動』と書いてあるのを見つける。 その文字を見て呆然としている坂本の肩を背後から誰かがこづいた。 「おい、お前。こんなところに嫌な車を駐めやがって」 振り返ると、中年の警官だった。 「んで、どうだったんだ。あの女。手、出したんだろ」 警官は、人通りの多い中、卑猥な手つきの動作をし、坂本を茶化した。そんな二人のやりと りを通行人たちが、おもしろおかしく眺めている。 坂本は、警官の目を睨み付けたまま、背中のマシンガンの銃身を両手でつかみ、柄の部分 で警官のこめかみ目掛け、力一杯振り下ろす。 警官は、その場でふらふらと倒れ、数センチメートル四方のパンのかけらに姿を変えてし まった。 「このクズ野郎!」坂本は、パンのかけらを一気に踏みつけ、粉々にしてやろうとしたが、 パンのかけらが困った顔で何かを訴えている様子を見て、クズにも生きる権利はある。 |
目次. 第二章へ .55.56.57.58.59.60.61.62.63.64.65.66.67.68.69.70.71.72.73.74.75. .76.77.78.79.80.81.82.83.84.85.86.87.88.89.90.91.92.93.94.95. |
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