| 出そうとしたが、思い出せない。 坂本は、酒を買いに行こうとしていたのを思い出して立ち上がったところで、軽いめまいが した。 突っ立ったまま、目を閉じ深呼吸をする。 ふと、居酒屋『ゆき』で漫画を読んでいた少年を思い浮かべる。『電話機のクロちゃん』 を読むのに丁度良い年頃なのではないか。そして、あそこに行けば、例の不思議な夢が何な のか、わかるのではないか。 どうせ酒を飲むのなら、あの店に行って、少年にこの本を読んでもらおう。 ここ数日、近所に買い物に行く以外、アパートにこもりっきりだった坂本は、たまには出 かけようと思い、日が暮れる前に居酒屋『ゆき』へむかった。 駅のホームでは、電車を待つ女子高生たちが、あちらこちらで「ナンカッ」「スゴイッ」 「トカ」といった言葉を多用した会話が交わされている。 坂本は、人気の少ないところまでホームを進み、適当な場所を見つけて『乗り降り口目標 |
| 目次. 第二章へ .55.56.57.58.59.60.61.62.63.64.65.66.67.68.69.70.71.72.73.74.75. .76.77.78.79.80.81.82.83.84.85.86.87.88.89.90.91.92.93.94.95. |
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