鞄の中から『電話機のクロちゃん』を取り出し、由希子に手渡した。 「まあ、うちの電話と同じじゃない」 「そう。この前、図書館でこの電話機の資料を見に来て、んでその帰りにここの電話機のベ ル音が聞こえたんで立ち寄ったんだ。そうそう、目次を開いてみて」 「そうだったの」そう言いながら、由希子はページをめくり目次を開く。 「表紙・挿絵 坂本昭二って書いてあるでしょ。私が坂本昭二」 「まあ。そうだったの。やっぱり画家の先生だったのね」 坂本は、少し照れくさそうに、 「いや、画家でも先生でもなく、ただのイラストレーター」 「坂本先生ね」 「だから・・・先生と、いわれるほどのなんとやらっていうから・・」 「いいじゃない。先生っていうあだ名だと思えば」 「・・・あっ、この本ねえ、出版社から何冊かもらってね、ここの坊やが読むのにちょうど いいんじゃないかと思って。プレゼント」 「ありがとうございます。あの子は漫画ばかり読んでいるんで、ちょうど良かったわ。」 厨房から奥の部屋へ、掃除道具をしまいにいったままテレビアニメに見入ってしまったと 思われる征雄に由希子が、 |
目次. 第二章へ .55.56.57.58.59.60.61.62.63.64.65.66.67.68.69.70.71.72.73.74.75. .76.77.78.79.80.81.82.83.84.85.86.87.88.89.90.91.92.93.94.95. |
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