「ゴンは『さようなら、もう、寂しくないし、いたずらもしないよ』そういって、見えなく
なるまで兵十に手を振っていました。めでたし、めでたし」
んん・・・、鬼退治、カミソリシュート・・・・月か。大杉は出てこなかったのか。
豊は、ハチャメチャでありながら、めでたし、めでたしと括られた舞台の脚本家兼役者を
どんな言葉で褒めてやろうか、考えながら笑顔を返してやる。
「おもしろかったでしょ」真知子が豊の顔をのぞき込む。
「ああ。おもしろかった」「ヨッ、この千両役者」栄は拍手していたゴツイ手で、満足げな
顔をしている栄の頭を撫でてやった。
「おい、それ見せてくれ」豊は、栄のスケッチブックを受け取り、一枚一枚、絵を見てゆく。
戦闘機に乗ったゴン、スポーツカーに乗ったゴン、ウルトラセブンの背中に乗り、空を飛ん
でいるゴン。様々な場面を模索していた様子がうかがわれる。豊の横に座り一緒にスケッチ
ブックをのぞき込んでいる栄が
「ホントは、もっといろんな事をやろうと思ったんだけどさあ・・・・」
スケッチブックに数枚の原稿用紙が夾まれていた。原稿には赤いボールペンで、校正の後が
あった。
「お、台本か。ん、先生に見てもらったのか」